特集 発生から紐解く 胎児超音波診断アトラス [Web動画付]
第4章 心臓以外の超音波検査
8.消化管の異常
-d.クロール下痢症
日高 庸博
1
N. Hidaka
1
1福岡市立こども病院産科
pp.1491-1493
発行日 2020年11月30日
Published Date 2020/11/30
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000001535
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
先天性クロール下痢症(congenital chloride diarrhea;CCD)は,回腸末端および結腸におけるactive Cl−/HCO3− exchangerの障害によりクロールを腸管から大量に喪失し難治性の浸透圧性下痢をきたす先天疾患で,血中および尿中のCl低値,便中のCl高値を特徴とする。腸管内HCO3−が欠乏して便は酸性となり,二次的にactive Na+/H+ exchangerによるNa+の吸収も減少してNa+排泄量が増加する。腎臓のNa+/H+交換輸送においてはNa+再吸収が優先されるため低K血症となり,脱水によりレニン-アンギオテンシン系が亢進することで低K血症はさらに助長される。常染色体劣性遺伝の疾患で,7番染色体長腕7q31に存在しCl−/HCO3−の輸送タンパクを発現するSLC26A3の変異による。血族結婚や同胞発生の報告が散見される。発症には地域性があるとされ,フィンランドやアラブ諸国で多い。これらの地域では3,200人に1人の頻度と報告されている1)。わが国では稀で,正確な発生数・頻度は不明だが,2014年の段階でわが国からの報告症例は会議録を含め49例にとどまっている2)。
Copyright © 2020, KANEHARA SHUPPAN Co.LTD. All rights reserved.