特集 産婦人科領域におけるレーザー診療の最前線
10.子宮内膜症の腹腔鏡下手術におけるレーザー治療の実際
-―アルゴンプラズマ凝固を含む―
平池 修
1
O. Hiraike
1
1東京大学医学部産婦人科学教室
pp.985-991
発行日 2020年9月1日
Published Date 2020/9/1
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000001392
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
子宮内膜症の発生原因は現在でも不明であるが,腹膜表面に月経血が到達し,その中の細胞が腹膜に生着することでマクロ的病変になるという月経血逆流説は,各種疫学的観察においても支持されている。子宮内膜症の病変は卵巣囊胞だけでなく腹膜表面に播種様に生着することから,月経痛,慢性的な下腹部痛いわゆる慢性骨盤痛の原因にもなる。
医療用レーザーは1960年代に開発され,以降,1980年代のCO2レーザー,Nd:YAGレーザー,KTPレーザーなどの開発が進むにつれ,腹腔鏡下手術においては子宮内膜症,不妊症などの分野で用いられるようになった。子宮内膜症の治療は薬物療法と手術療法がベースになるが,一定の大きさの子宮内膜症性卵巣囊胞が存在する場合や腹膜における子宮内膜症に対して焼灼をしたい場合は治療選択肢として考慮される。子宮内膜症の腹腔鏡手術におけるレーザー治療には従来KTPレーザーなどが用いられ,腹膜病変の焼灼を主体に使用されてきたが,近年でも原理的にはレーザーと異なるものの,アルゴンプラズマ凝固装置が腹腔鏡手術において汎用されている。これらの一般的特性としては,焼灼・蒸散するときの組織深達度が低いことから,他臓器損傷のリスクが低いことが大きなメリットとして挙げられる。
Copyright © 2020, KANEHARA SHUPPAN Co.LTD. All rights reserved.