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摂食障害は小児・思春期に発症する代表的な精神疾患であり,神経性やせ症(anorexia nervosa:AN)や回避・制限性食物摂取症(avoidant/restrictive food intake disorder:ARFID)がその中心を占める.ANは精神疾患の中で最も死亡率が高い疾患で,身体的合併症に加えて心理社会的機能障害を長期に残す可能性がある.ARFIDはDSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition:アメリカ精神医学会精神障害の診断と統計マニュアル第5版)1)で定義された,やせ願望やボディイメージ障害を伴わない摂食障害であり,小児では成人よりも高率に認められる.偏食や摂食回避によって栄養障害や成長障害をきたすこともある.国内調査によれば,思春期女子のAN有病率は0.3~1%程度2)であり,男子にも一定数が存在する.さらに近年は小学校高学年からの低年齢発症例が増加しており,学校生活や家族生活に及ぼす影響は大きい.これらの疾患は学業不振や不登校,家族関係の悪化を引き起こし,長期的な精神的健康にも深刻な影響を及ぼす.予後改善のためには早期介入・早期治療が重要とされている.こうした背景をふまえ,日本小児心身医学会は2008年に小児摂食障害診療ガイドライン第1版,2015年に第2版を刊行した.その後の10年間で国際的エビデンスが蓄積され,再栄養戦略や心理療法の推奨度,ARFIDの取り扱いなどに大きな修正が必要となった.これらをふまえて2023年に改訂第3版3)を刊行し,最新の知見に基づいた実践的かつ現場対応型の指針を掲載した.改訂第3版では,診療の流れが明確にフローチャート化され,初診から診断,治療方針決定,専門機関への紹介までの一連の手順が整理された.小児科医は,初診時に体重減少や食行動異常を確認し,まず身体的緊急性の有無を評価する.低体温,徐脈,低血圧,急激な体重減少などがあれば入院治療を検討する.緊急性が低い場合は外来フォローとし,疾病教育,栄養教育を通じて家族の理解を得ながら治療契約を結ぶ.そのうえで,問診・身体診察・心理評価・社会的背景を含めた多軸評価を行い,DSM-51)やGOSC(Great Ormond Street criteria)4)に基づく病型分類・重症度評価を行う.重症例や精神症状が顕著な場合には児童精神科や専門機関へ紹介する基準が具体的に示され,地域医療と専門医療が連携の一助となっていると考えられる.この体系化により,各施設が自らの対応可能範囲を認識し,治療が途切れず患者と家族が安心して継続的支援を受けられるような地域の診療体制が確立されることを期待している.

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