特集 小児科医が診る泌尿器疾患アップデート――どう診断・治療するか? 予後はどうか?
11.尿路感染症
金子 一成
1
1関西医科大学小児科学講座
pp.824-830
発行日 2025年8月1日
Published Date 2025/8/1
DOI https://doi.org/10.18888/sh.0000003545
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
小児,とくに乳幼児の尿路感染症(UTI)は診る機会の多い疾患であるが,特異的所見に乏しく見逃されやすい.したがって感染巣不明の発熱を呈する乳幼児の診療においてはUTIを念頭に,抗菌薬投与前に尿培養の検体を導尿カテーテルで採取する.UTIは腸内細菌によるものがほとんどなので,治療は第1~3世代のセフェム系抗菌薬を投与するが,効果のない場合,基質特異性拡張型βラクタマーゼ産生菌などの多剤耐性菌の可能性を考慮する.急性腎盂腎炎のような上部UTIは腎実質の炎症を伴うため,反復すると瘢痕化をきたし,恒久的腎障害に至る.腎瘢痕化を防ぐには,上部UTIを起こした小児の約半数に併存する先天性腎尿路異常や膀胱直腸障害(BBD)を見逃さないことが重要で,そのためには超音波検査や排尿時膀胱尿道造影を実施するとともにBBDに関する問診を忘れてはならない.高度の膀胱尿管逆流やBBDを認めた場合には少量の抗菌薬の予防内服や排尿・排便指導を行う.最後に最近の話題として,UTIのリスク因子としての腸内細菌叢の乱れについて紹介する.

Copyright © 2025, KANEHARA SHUPPAN Co.LTD. All rights reserved.