特集 学校心臓検診で見つける・見つかる 不整脈・心疾患
1.学校心臓検診の意義
鮎澤 衛
1
1神奈川工科大学健康医療科学部
pp.441-450
発行日 2025年5月1日
Published Date 2025/5/1
DOI https://doi.org/10.18888/sh.0000003444
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学校心臓検診は,わが国特有の健康診断制度で,70年以上にわたって実施されている.現在は,調査票と心電図による検診が全国共通の方式として行われており,一部で心音図の記録も行われている.
毎年ほぼ一定の率で心疾患が診断され,以後は定期的に経過を観察する場合もあれば,なかには早期発見された疾患に対して積極的に治療を行うこともある.多くの疾患が検診を機会にして発見され,早期に治療の適応がある心疾患に介入が可能になった事例や,突然死の発生を未然に予防できたと考えられる事例は少なくない.実際には,異常所見があっても無症状のまま経過する例が多いが,それらの中でのリスク評価や長期の管理方針については不明な点も多く,課題が残されている.
また,検診を担当する事業者や医師の精度にも地域差や個人差があり,その標準化が求められている.さらに社会的課題として,個人の健康に関する情報管理をいかに適切に行うかが問われている.これらの問題の解決策としては,行政と,教育機関,医師会,検診事業者を含む医療機関との協力による検診データのデジタル管理が不可欠と思われる.今後,学校心臓検診のシステムは,これらの課題を改善しながらその意義を深めていくことが期待される.

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