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はじめに
昭和48(1973)年に学校心臓検診が全国で始まり,平成7(1995)年には小学校1年生,中学校1年生,高校1年生全員を対象にした心電図検査が義務化された.開始当初はリウマチ熱性心臓病の発見・治療を目的としていたが,次第に先天性心疾患の早期発見や,さらには心臓手術後患児の管理,不整脈や心筋症の早期発見などへとその目的は多岐にわたっている.心臓検診の目標は,①医療が必要な例を可能な限り漏れなく発見し,適切な治療を受けられるようにすること,②心疾患を正しく診断し,それに応じた正しい指導区分を定め,適切な指導を行って疾病の増悪を防ぎ,突然死を予防すること,③正しい指導区分を定めることで過度の運動制限や無用の生活制限を解除すること,である1).
実際,平成11(1999)年から平成20(2008)年までの10年間の学校管理下での突然死例は1,675件であり,年間35〜83件の発生を認めていた.突然死のうちおよそ71%が心臓系疾患と考えられた.さらに,運動中,後の事故が59%を占めていた.運動のなかではランニングが最も多く,次いでランニングと同様に走り回ることの多い球技での発生が多い.部活動などでの運動強度の上昇する中学校・高校での突然死発症が多い理由の一つと考えられる.しかし最近では,学校管理下での突然死件数は減少しており,平成11年度は88名,14年度は56名と年々減少し,平成20年度は35名であった2).学校心臓検診が普及し,1次スクリーニングでの既診断例の管理が改善したこと,心疾患が正しく診断され,適切な管理がなされている結果と考えられる.また,世界と比較しても,全学童生徒に心電図を含む心臓検診を3回行っているのは日本だけであり,このシステムによって,児童は突然死から守られていることが報告されている3).そして学校心臓検診で未知の心臓疾患を早期発見し,適切な指導,運動管理を行い,このような突然死例をさらに減らすことが望まれる.
そこで今回は学校心臓検診の概要と,どのように臨床に生かされているかについて解説する.
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