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現病歴;月齢6か月になり,BCGと4種混合ワクチンを接種,接種後には腋窩リンパ節の腫脹や発熱等の有害事象は認めていない.接種の18日後に脇を抱えて抱きかかえると啼泣するようになり,寝返りもしなくなった.接種24日後両側耳下,腋窩の腫瘤に気づいた.接種26日後に近医を受診した.2cm大の耳下腺部リンパ節腫脹があり,発赤を伴った.腫瘤の穿刺を行い膿汁からはメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(methicillin-susceptible Staphylococcus aureus:MSSA)が検出された.同日からセフトリアキソンの投与を開始した.抗菌薬投与を3日間行ったが白血球数の上昇があり,治療目的で当院紹介となる.経過中38.5度以上の発熱はなかった.当院初診時体温37.2度,心拍数100/分,血圧110/45,呼吸数36回/分,身長67.2cm(−0.2SD),体重8.8kg(+0.9SD),両側耳下部,両側腋窩部に2cm大の熱感,発赤・腫脹を伴う腫瘤を認めた(図1).造影CT検査ではそれぞれの腫瘤はring enhancementを呈した(図2).右腋窩1か所,左腋窩1か所,右頸部2か所,左頸部1か所,左鎖骨上窩1か所の腫瘤の穿刺排膿を行い,それぞれから茶褐色・混濁した粘性の強い膿汁を各々1~3mL程度採取した(図3).腋窩・頸部穿刺液からは黄色ブドウ球菌を検出し,抗酸菌の発育はなかった.複数回行った血液培養では有意菌のw検出はなかった.MSSAによる多発する皮下膿瘍と診断し,セファゾリン投与を14日間行った.治療開始後1週間程度で脇を抱え上げても嫌がらなくなり,寝返りも可能となった.採血検査での改善(表1)ならびに腫瘤の縮小を超音波検査で確認している.心臓超音波検査では疣贅を含め,異常はなかった.免疫グロブリン値,補体値,リンパ球サブセット,リンパ球幼若化試験に異常はなく,予防接種を行った百日咳菌に対する特異抗体を獲得していた.抗好中球抗体は陰性で好中球活性酸素産生能にも異常はなく,原発性免疫不全症の原因遺伝子を両親と本人の3名で解析を行ったが異常はなかった(表2).現在発症から2年が経過しているが重篤な疾病の罹患はなく,発達発育も正常であり普通保育園に元気に通園している.
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