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現病歴:生来健康な2歳男児.約10日間続く右足の痛みを訴えたが,痛みは自然に軽快した.その1か月後に再度右側大腿部の痛みを訴えた.立位をとること,歩行することは困難であり,夜間は疼痛のため何度も覚醒した.疼痛が自制困難となり来院された.来院時の体温は37度後半,右側大腿周囲径は患側が2cm腫大していた(図1).アセトアミノフェン屯用を指示したところ,痛みは1週間程度で軽快し歩行可能となった.初診の3週間後には疼痛は消失していた.初診の4か月後に右側大腿部痛,38度台の発熱,右側大腿腫大が1週間続き自然軽快した.5か月後に再度右側大腿部痛,38度台の発熱,右側大腿腫大を認め加療目的に入院とした.身長 86.2cm(−1.7 SD),体重 11.1kg(−1.5 SD),体温 38.5度,脈拍 108回/分,血圧 105/46,呼吸数 24回/分,右側大腿周囲径は26.5cm,左側大腿周囲径24.5cmで,左右差を認めた.採血検査では軽度の炎症反応上昇を呈し,右側大腿単純X線写真では層状の骨膜反応を認めるが,骨透亮像は認めなかった(表,図2).超音波検査では骨皮質の広範な不整像と血流の増加,隣接筋の浮腫を認めた.右側大腿CT検査では大腿骨骨幹部皮質が肥厚しており,骨周囲には層状の骨膜反応を認め,周囲組織にも浮腫を疑う低吸収域を認めた(図3).右側大腿MRI検査で右側大腿骨幹部の肥大ならびに骨髄はSTIRで高信号を呈し(図4),MRA検査では血流に富む腫瘤を認めた(図5).これらの結果から骨髄炎を疑った.骨シンチグラフィーでは右側大腿部以外に取り込みは認めなかった.大腿骨骨生検では髄腔が線維性結合織や肉芽組織で占められ,組織球などの炎症細胞浸潤,骨芽細胞や破骨細胞の増殖を伴っているが,検体内に腫瘍性病変はなかった(図6).一般細菌・抗酸菌培養検査,16 sリボゾーマルRNAを用いた病原体の解析でも有意な病原体は検出されず.腸骨骨髄検査でも悪性細胞は認めなかった.症状の緩和目的に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用している.初診時から24か月,生検ならびに投薬を開始し18か月が経過するが痛みや発熱はなく,MRI検査でも左右差を認めないことからNSAIDsを減量した.保育園に元気に通園し活発に運動しているが再発は認めていない.
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