５．慢性腎疾患をもつ妊婦

2002年に米国よりCKD（chronic kidney disease：慢性腎臓病）の概念が提唱され，本邦でも約10年ほど前から広く普及するようになってきた．CKDの早期発見と適切な管理によって，患者の腎機能・生命予後・QOLの改善をすることができる．本邦でのCKDを有する妊婦の診療もこの10年で飛躍的に進歩した．代表的な妊婦のCKDの原因疾患であるIgA腎症，ループス腎炎，糖尿病性腎症，ネフローゼ症候群，常染色体優性多発性嚢胞腎について，診療の概略を説明した．末期腎不全（end-stage kidney disease：ESKD）に陥り，維持透析治療を受けていたり，腎臓移植を受けた妊婦の診療も，腎臓病医・産科医・新生児科医の協力により飛躍的に向上してきている．