整形外科における性差医療・医学 -―イントロダクションとして―

Gender-specific medicine in orthopaedic surgery；an introduction

要旨：性差医学・医療は，男女の生物学的，生理学的な違いを考慮して，疾患の発生・進行，薬物の効果・副作用，治療の選択において個別化されたアプローチを追求する分野である。性差は染色体の違いだけでなく，遺伝子，ホルモン，免疫応答，環境要因，行動パターンなど，複雑な要素によっても形成され，生殖系疾患に限らず，非生殖系疾患でも重要な役割を果たすことが知られている。また，薬物代謝においても性差が存在し，薬物の効果や副作用に性別が影響を与えるため，性差を考慮して薬物治療を個別化することは，より効果的で安全な医療の実現につながる。性差医療・医学の研究や実践は，男女の健康格差を縮めるための重要な取り組みであり，今後性差を考慮した医療ガイドラインの策定や，性差に関する研究の推進が求められている。