特集 血菅炎症候群のすべて
1 総論
血管炎の病理
石津 明洋
1
1北海道大学大学院保健科学研究院 病態解析学分野
キーワード:
肉芽腫性血管炎
,
壊死性血管炎
Keyword:
肉芽腫性血管炎
,
壊死性血管炎
pp.975-981
発行日 2021年9月20日
Published Date 2021/9/20
DOI https://doi.org/10.18888/rp.0000001715
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血管炎は,障害される血管の太さにより,大型血管炎,中型血管炎,小型血管炎,多様な血管を侵す血管炎に大別される(Chapel Hill Consensus Conference 2012分類:CHCC2012分類)1)。血管炎の主座となる動脈系は,内膜,中膜,外膜の3層構造を基本とする。大型血管に相当する弾性動脈の中膜には,十数から数十に及ぶ弾性線維と平滑筋の厚い層があり,外膜から中膜の外側1/3付近まで脈管栄養血管が分布している。弾性動脈の内膜側から中膜の内側2/3付近までは,血管内腔を流れる血液より酸素供給を受けているが,外膜から中膜の外側1/3付近までの酸素供給は脈管栄養血管に依存している。このため,弾性動脈の中膜外側1/3付近は低酸素に陥りやすい状況があり,このことが動脈解離の際,同部に解離が生じやすい一因となっている。中型血管に相当する筋性動脈では,内膜と中膜の境界に内弾性板が,中膜と外膜の境界に外弾性板が存在し,弾性線維の層はなく,中膜は平滑筋層により形成されている。小型血管に相当する細動脈には,外弾性板は認められない。動脈系と静脈系をつなぐ毛細血管には内膜,中膜,外膜の3層構造は認めず,内皮細胞が形成する血管腔を周皮細胞が取り囲んでいる。静脈系は,動脈系同様に内膜,中膜,外膜の3層構造を基本とするが,動脈系に比べて層構造や血管のサイズによる違いは明確ではない。
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