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転移性脳腫瘍は担癌患者のおおよそ4 人に1 人に発生すると考えられており,脳に発生する腫瘍としては最も患者数の多い疾患である。原発臓器としては肺癌が最も多く約半数を占め,乳癌がそれに続く。従来,転移性脳腫瘍を発症した患者の予後は等しく不良であると考えられていた。しかし実際には患者によって予後は大きく異なり,また予後に影響を及ぼす因子も原発臓器により異なることなどが次第に明らかになってきた。従来からの転移性脳腫瘍治療の手段として,手術,定位放射線照射,全脳照射がある。殺細胞性抗癌剤は脳血管関門の通過性に難があることから転移性脳腫瘍に対する効果は限定的と認識されてきた。しかし近年,分子標的薬が一部の転移性脳腫瘍に有効であることが分かり,転移性脳腫瘍治療の一手段としての地位を獲得した。したがって今,我々は4 つの武器をもったことになる。4 つの組み合わせは単純に15 通りであるが,前二者(手術と定位放射線照射)が標的とした個々の病巣に対して強い効果をもつが標的以外には無効である「局所専用の武器」であるのに対し,後二者(全脳照射と薬物療法)は脳全体という領域を広くカバーするが,局所効果は劣るという「領域制圧型の武器」としての特徴をもつ。それぞれの病態に対してどの治療法を,どのような順番で使用するのが適切か。これは現在も盛んに研究されている領域である。我々は2015年に予後予測指標スコアによって治療法を選択するという考え方を提唱した。本稿ではその考え方を紹介するとともに,様々な状況におけるその考え方の妥当性について考察する。また新たな治療法である術後腫瘍床への定位放射線照射や分子標的薬の使用法についても私見を述べる。
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