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近年,結腸癌手術は2009年にHohenbergerらによってCME(complete mesocolic excision)とCVL(central vascular ligation)の概念が提唱され,欧米を中心に普及している1)。わが国における栄養血管を根部で郭清を行うD3郭清は,この概念とほぼ同義と考えられている。海外での報告では,CMEとCVLを基本としたリンパ節郭清は従来のリンパ節郭清と比較し,術後再発率や予後の改善がみられるという報告がある一方2, 3),短期成績では血管損傷が増加したとの報告がある4)。この理由の1つには,中結腸動脈(middle colic artery;MCA)と上腸間膜動脈(superior mesenteric artery;SMA)および上腸間膜静脈(superior mesenteric vessel;SMV),胃結腸静脈管(gastrocolic trunk;GCT)などのバリエーションが多く,立体的に把握が困難であることが考えられる。とくに肥満症例においては腸間膜内の脂肪が厚く,血管の走行が判断しづらいため,誤認しやすい。血管走行の誤認は血管損傷のリスクが高くなるだけではなく,不十分なリンパ節郭清の要因になり,また過大な侵襲になる可能性がある(図1)。そのため,術前のCT angiographyでの血管走行の確認は重要であるが,血管走行を認識しても,実際の手術時には腸間膜の展開により血管は牽引されて位置のずれが生じるため,血管走行の把握が困難なことも多い。そのため,当科では2021年より超音波検査を用いた腹腔内エコーガイド下リンパ節郭清を腹腔鏡手術に導入し,その有用性を報告してきた5)。過去にも術中エコーが左側結腸癌での下腸間膜動脈の分岐の同定,右側結腸癌での肥満症例でのSMV同定に有用であったとの報告がある6, 7)。また,わが国における大腸癌手術は2018年から直腸癌,2022年から結腸癌においてロボット支援手術が保険適用となり,急速に増加している。本稿では,ロボット支援右側結腸癌での腹腔内エコーガイド下リンパ節郭清手技について解説する。
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