特集 鼠径部・腹壁瘢痕ヘルニア手術を極める―直達手術から腹腔鏡・ロボット支援手術まで
Ⅱ.鼠径部ヘルニア 4)Shouldice法─その可能性
成田 匡大
1
1神戸市立医療センター中央市民病院外科
キーワード:
組織修復法
,
神経
,
慢性疼痛
Keyword:
組織修復法
,
神経
,
慢性疼痛
pp.1213-1219
発行日 2024年7月15日
Published Date 2024/7/15
DOI https://doi.org/10.18888/op.0000003979
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Shouldice法は今から80年以上前にEdward Earle Shouldiceにより,当時では考えられなかった「術後早期から歩行可能なヘルニア手術」をコンセプトに考案されたヘルニア根治術である1)。国際ガイドラインで推奨されている組織修復法であるものの2),わが国でShouldice法を施行している施設はほとんどない。Shouldice法では,鼠径管内に存在する構造物を丁寧に分解し,後壁を補強すべく合理的に組み立て直すという作業が必要になる。そのため,作業工程が多く手技が煩雑であることから,Shouldice法を導入しようという施設は少ないのかもしれない。現在の潮流である腹腔鏡下ヘルニア根治術,国際ガイドラインが推奨するLichtenstein法,そして,このShouldice法……。それぞれ一長一短があると思われるが,読者の皆さまは,それぞれのメリット・デメリットを説明したうえで患者に術式の選択をゆだねているだろうか? 実際,良性疾患に一生なくなることのない異物であるメッシュを使用したくない,という患者のニーズは少なからず存在する。さまざまな医療分野でテイラーメイド化が進んでいる現在,患者のニーズに合わせた手術方法を提供するのがこれからの時代に望まれるスタイルであり,そのような医療を提供できる外科医こそが鼠径ヘルニア手術のスペシャリストと言えるのではないだろうか。腹腔鏡手術全盛期の今だからこそ,あえて読者の皆さまに修得いただきたい術式である。
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