特集 急性腹膜炎の治療戦略と手術
Ⅱ.原因疾患別の治療戦略 4)急性虫垂炎に合併した急性腹膜炎に対する手術
長尾 さやか
1
,
榎本 俊行
1
,
橋本 瑤子
1
,
柿崎 奈々子
1
,
神馬 真里奈
1
,
斉田 芳久
1
1東邦大学医療センター大橋病院外科
キーワード:
腹膜炎
,
虫垂炎
,
腹腔鏡手術
Keyword:
腹膜炎
,
虫垂炎
,
腹腔鏡手術
pp.313-320
発行日 2024年3月15日
Published Date 2024/3/15
DOI https://doi.org/10.18888/op.0000003757
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腹膜炎とは,通常,無菌である腹腔内に炎症が波及した状態を指す。発生・原因病巣別に一次性(バクテリアルトランスロケーションなどに伴うもの) / 二次性(消化管や泌尿生殖器からの炎症の波及) / 三次性(それらの治療後に合併症として生じたもの),臨床経過別に急性腹膜炎 / 慢性腹膜炎,進展度別に限局性腹膜炎 / 汎発性腹膜炎,病因別に細菌性腹膜炎 / 非細菌性腹膜炎に分類される1)。一般臨床で腹膜炎とは二次性の急性細菌性腹膜炎を指すことが多い(以下腹膜炎)。原因疾患として虫垂炎(34.2%),胆嚢炎(18.5%),上部消化管穿孔(11.0%)などが挙げられる2)。これらの疾患を契機に発症した腹膜炎が増悪すると汎発性腹膜炎となりエンドトキシンショック,播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation;DIC),多臓器不全から生命を脅かす病態となるため適切な治療介入を要する。原因疾患として最多となる急性虫垂炎は日常診療において遭遇する頻度が高く,急性腹症の患者のうち急性虫垂炎の割合は男性で9.2%,女性で7.2%,生涯罹患率は男性で8.6%,女性で6.9%とされ3),推定患者数は減少傾向にあるが高齢者の患者数は増えている。
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