特集 癌外科医必読 腹膜播種の治療戦略と手術
Ⅰ.総論 1)腹膜播種診療ガイドライン作成の背景と目的
北山 丈二
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1自治医科大学消化器一般移植外科・臨床研究センター
キーワード:
腹膜播種
,
ガイドライン
,
個別化医療
Keyword:
腹膜播種
,
ガイドライン
,
個別化医療
pp.1521-1525
発行日 2022年9月15日
Published Date 2022/9/15
DOI https://doi.org/10.18888/op.0000002961
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腹腔は消化器,女性生殖器,泌尿器などの臓器を内包する人体内最大の体腔で,内面は1層の腹膜中皮細胞で覆われ,多量の内臓脂肪を内包するという解剖学特徴を有する。また,大網乳班(milky spot)や横隔膜のstomataなどを介してリンパ管系と交通していることに加え,免疫学的にもきわめてユニークな環境にある(図1)1,2)。腹膜播種は,腹部に発生した悪性腫瘍が,腹膜内腔側に露出したのち,この閉鎖腔内に癌細胞が散布される形で多数の転移巣を形成するという特殊な病態で,進行すると大量の腹水(癌性腹水)や,腸管,尿管,胆管などの管腔臓器の狭窄をきたし,癌性腹膜炎という末期的状態に陥る予後不良の病態である2,3)。原発腫瘍としては,胃癌,膵癌や大腸癌などの消化管癌と卵巣癌が主であるが,まれに消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor;GIST)や食道癌,乳癌などの腹部以外の原発腫瘍からの播種も存在する。
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