特集 癌外科医必読 腹膜播種の治療戦略と手術
Ⅰ.総論 2)腹膜播種に対するがん薬物療法(全身薬物療法)
児玉 紘幸
1
,
谷口 浩也
1
,
室 圭
1
1愛知県がんセンター薬物療法部
キーワード:
腹膜播種
,
全身薬物療法
,
腹膜─血液関門
Keyword:
腹膜播種
,
全身薬物療法
,
腹膜─血液関門
pp.1527-1532
発行日 2022年9月15日
Published Date 2022/9/15
DOI https://doi.org/10.18888/op.0000002962
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腹膜播種は腹部に発生した悪性腫瘍が漿膜面に露出したのち,腹腔内に癌細胞が散布される形で多数の転移巣が形成される特殊な病態である。進行すると,横隔膜や大網に豊富に存在するリンパ管開口部に腫瘍細胞が付着し,占居することによって腹水のドレナージが阻害される。結果として腹水貯留を引き起こし,癌性腹膜炎をきたす。また,腹膜播種は管腔臓器の癒着や狭窄を引き起こし,腸閉塞,尿管狭窄や胆道閉塞などをきたすことから,患者の生活の質(quality of life;QOL)を著しく低下させる。さらに腹膜播種は測定可能病変を有することが少なく,治療効果判定が難しいため病状進行や治療変更の判断に苦慮することがある。原発臓器としては胃癌,膵癌や大腸癌などの消化器癌や卵巣癌などの婦人科癌が主であり,低分化癌が多い傾向にある。腹膜播種は一般的に遠隔転移の1つとして扱われ,他の遠隔転移と同様に全身薬物療法が標準治療である。
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