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走行中の東北新幹線の連結器が外れ,輸送障害を来したニュースは大々的に報道された。上野・大宮間を走行中のはやぶさ号,こまち号が分離し緊急停止した。運転再開まで数時間を要したが,マスコミは重大事故の可能性やメンテナンスへの疑問を呈し,国の運輸安全委員会が重大インシデントに指定したことも相まって“安全神話崩壊”などと騒ぎ立てた。無論,あってはならぬ事故であり筆者とて軽視するわけではないが,両列車とも緊急停止しており安全バックアップ機能は働いている。安全神話などけしからぬ用語であり,新幹線が60年間旅客死亡事故ゼロであるのは毎日多くの鉄道マンが安全運行を実践する積み重ねであり,神の御加護ではない。尤も同種の事故は2回目であり,いずれも同型車両である。鉄道における連結運転は本邦で毎日おびただしい数で行われており,恐らく秋田新幹線用のE6系電車の連結器に問題があるのであろう。マスコミの論調は連結器が外れ列車が暴走する危険性を提起しているが,これは誤りである。映画などでは,列車内で賊に追われた正義の味方が屋根上に上がり退避を試みるが,アッパレ賊も屋根に追随し,チャンバラ如きアクションを行う。あわや正義の味方危機一髪! との場面で,正義の味方は知恵を働かせ,連結器を蹴って列車を分離,哀れな賊は見事取り残され正義の味方は堂々走り去る……などと嘘八百の場面が存在する。屋根上で戦うこと自体不自然であるが,人間が蹴ったぐらいで外れる連結器など皆無である。そもそも連結器には空気ブレーキが併備されており,連結器が外れた瞬間空気が漏れることで,あろうことか列車全体が緊急停止する。映画監督の意図に反し賊は悠々と正義の味方を捉え,悪が勝利してしまうのである。
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