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大学院で皮膚免疫を研究したいと考えたが,当時京大では皮膚科の中にアレルギーや免疫のグループがなく,また,基礎の教室で研究する院生も少なくなかったため,最初は老化を研究している基礎の教室にお世話になり,隣の教室の理学部出身の先生に指導してもらうという方法で免疫の老化を研究した。しかし,臨床に戻ってからも,皮膚疾患に直接関わる免疫の研究をしたいという思いが強く,米国クリーブランドのCase Western Reserve Universityの皮膚科学教室(K. Cooper教授)に留学した。まず,紫外線による免疫寛容の研究をマウスで行った。サイトカインの定量に用いたreal-time PCRは,発売後間もなく研究棟の共同機器で導入されたばかりで,なぜかネイティブではない留学生の私が代表で説明会に行くよう言われ,ともかく必死に聞き取って,少ない情報を調べてマスターし教室員にやり方を指導した。日本と研究生活の環境は異なり,マウスの継代維持や試薬作製に時間をとられることはなく,ヒトの皮膚を実験のために入手することもできた。ただ,生活も実験系も,知り合いもいないところで白紙から構築する大変さはあった。しばらくして,抗IL-12/23p40抗体を初めてヒトに投与する乾癬の治験の基礎研究を任された。効果は未知数であったため,最初は患者さんのエントリーが進まずアッセイの予定が遅れ,宮地教授から帰国のお話がきたが,このプロジェクトをやり遂げないと帰れないと少し延期を了承していただき,帰国前日の夜まで実験して何とか解析した。あれから20年たち今思えば,乾癬のために新しく開発された生物製剤が世に出ていくのに同時進行で関わったことで,ずっと生物製剤について考えながら皮膚科医人生を送っている。
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