特集 黄斑上膜の最新情報
2 特発性黄斑上膜と視機能
若林 美宏
1
1東京医科大学臨床医学系眼科学分野
キーワード:
特発性黄斑上膜
,
変視
,
Mチャート
,
M-CHARTS
,
不等像視
,
硝子体手術
,
OCT
Keyword:
特発性黄斑上膜
,
変視
,
Mチャート
,
M-CHARTS
,
不等像視
,
硝子体手術
,
OCT
pp.211-218
発行日 2025年3月5日
Published Date 2025/3/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000004083
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特発性黄斑上膜(idiopathic epiretinal membrane,以下ERM)は有病率の高い眼疾患であり,OCTの普及も相まって発見率が上がっている。したがって,我々はERMを診療する機会が多くなっていると感じる。ERMは高度な視力低下に至る眼疾患ではないが,多彩な視機能異常が生じる。ERMは黄斑部網膜表面に生じた原因不明のセロファン状の膜組織であり,膜の求心性収縮により黄斑が徐々に牽引され,その程度に応じて視力低下,変視(歪視),不等像視(主に大視症)が緩徐に進行する。そして,変視,不等像視が高度に進行してしまうと,立体視に代表される高次の視機能障害も生じ1)2),さらに視覚関連QOLも低下することがわかっている3)。また片眼性のERMであっても,日常視を想定した両眼開放下でも変視を訴える症例が存在することや4),黄斑偏位に起因する複視(ズレ)を訴える症例があること5)なども検証されている。いずれにしろ,硝子体手術による膜除去が唯一の治療法であり,適切な時期に手術を行えば,術後に視力低下,変視,立体視異常,視覚関連QOLの低下などの視機能障害は徐々に改善する。したがって,ERMを経過観察していく場合や,硝子体手術のタイミングを考えるうえで,ERMの視機能障害の特徴と詳細を理解しておくことは重要である。そこで本稿では,ERMと視機能に関わる臨床研究の結果をレビューし,現在までにわかっていることをまとめた。

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