特集 眼科における最新医工学
II.視機能再生工学
前眼部の再生工学
(3)角膜内皮の再生医療
天野 史郎
1
,
山上 聡
2
1東京大学医学部附属病院角膜移植部
2東京大学医学部附属病院ティッシュ・エンジニアリング部角膜組織再生医療講座
pp.178-181
発行日 2005年10月30日
Published Date 2005/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410100210
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はじめに
現在,角膜移植の手術適応の約半数は,角膜内皮細胞が障害された水疱性角膜症である。水疱性角膜症に対しては全層角膜移植が広く行われているが,できうるならば障害の根本的な原因となっている角膜内皮細胞だけを移植し,健常な上皮や実質は残すような手術がしたい。これに近い術式として,角膜中央7~8mmの範囲の角膜内皮+後1/4ほどの厚さの角膜実質のみを交換する深層内皮角膜移植が行われるようになってきている。このように,これまでの全層角膜移植術,表層角膜移植術に加えて,深部表層角膜移植,輪部移植,深層内皮角膜移植などの新しい術式が登場してきた。これらの新しい術式に共通するコンセプトは,障害された部分のみを取り替えて,健常な自己の組織はできるだけ残して利用する,という点である。角膜再生医療においても,角膜を上皮,実質,内皮に分けて考え,それぞれの部分を組織工学の技術で作製し,角膜の障害の病態に応じて,各部分を組み合わせて使用するという手法が取られている。角膜パーツ移植と相同のコンセプトである。
角膜内皮細胞は角膜の透明性を維持する重要な角膜のパーツである。角膜内皮が障害される水疱性角膜症のような症例では,角膜内皮のみを交換できれば理想的な治療となる。さらにこのドナーの角膜内皮細胞を培養・増殖させ数を増やして利用できれば,わが国における角膜ドナー不足の問題を解決する一助になると考えられる。以下に筆者らが取り組んできた培養角膜内皮細胞に関する研究についてご紹介したい。
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