特集 眼科における最新医工学
II.視機能再生工学
前眼部の再生工学
(4)角膜内皮の再生工学
山上 聡
1
,
天野 史郎
2
1東京大学医学部附属病院ティッシュ・エンジニアリング部角膜組織再生医療講座
2東京大学医学部附属病院角膜移植部
pp.182-186
発行日 2005年10月30日
Published Date 2005/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410100211
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はじめに
角膜移植手術の適応疾患は内眼手術後の水疱性角膜症をはじめ内皮細胞数の減少によるものが多く,移植した角膜の拒絶反応のターゲットもまたほとんどは角膜内皮細胞である。一部で深部実質と内皮細胞層のみを移植する深層角膜内皮細胞移植の報告もなされているが1,2)一般的ではなく,これらの症例に対し全層角膜移植手術が行われている。さらに不幸にも移植片の角膜内皮細胞数が減少し移植片不全の状態となると,また全層角膜移植手術の適応となる。全層角膜移植後は,症例により乱視,遠視,近視などの強度の屈折異常を伴うことも少なくなく,このような場合には角膜は透明治癒していても眼鏡では十分な視力が得られないことになる。また米国を除く世界中で角膜は供給不足の状態であり,わが国でも相当数の角膜を海外アイバンクに依存している。このような背景を踏まえると,1つのドナー角膜の内皮細胞から培養などにより角膜内皮細胞を供給することができ,さらに術後の屈折異常を最小に抑えた内皮細胞の供給法があれば角膜の治療戦略は大きく様変わりするものと予想される。
現在筆者らはこのような治療法の開発を目ざして研究に取り組んでおり,その成果を紹介する。
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