症例報告
両眼にPurpureocillium lilacinum角膜炎を発症した1例
前田 紗知衣
1
,
久須見 有美
1
,
鈴木 美音
2
,
安藤 良将
1
,
重安 千花
1
,
山田 昌和
1
1杏林大学医学部眼科学教室
2杏林大学医学部付属病院臨床検査部
キーワード:
真菌
,
感染性角膜炎
,
Purpureocillium lilacinum
,
fungus
,
infectious keratitis
Keyword:
真菌
,
感染性角膜炎
,
Purpureocillium lilacinum
,
fungus
,
infectious keratitis
pp.289-294
発行日 2024年3月5日
Published Date 2024/3/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000003561
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Purpureocillium lilacinum(P. lilacinum)は糸状菌であり,まれに眼感染症を惹起することが知られている。今回我々は,3年の間隔を経て,両眼に発症したP. lilacinumによる角膜炎を経験したので報告する。症例は75歳女性。左眼は幼少期の外傷のため光覚はなく,右眼は虹彩炎の治療中であったが,矯正視力は(1.2)あった。全身疾患として糖尿病があり,外傷歴はないが,自宅はいわゆる「ゴミ屋敷」のような有様であったという。数日前からの左眼の充血と角膜の白濁を主訴に杏林大学医学部付属病院眼科を受診した。角膜下方にやや不整の浸潤があり,角膜の擦過培養検査よりP. lilacinumが検出された。ミカファンギン点眼,ボリコナゾール点眼と内服,ピマリシン眼軟膏で加療を開始したものの治療抵抗性であり,3週間後には浸潤巣の増大,眼内への炎症の波及がみられ,眼球内容除去に至った。3年後に右眼の瞳孔領下方に角膜浸潤と前房蓄膿がみられ,角膜の擦過培養検査からP. lilacinumが検出された。ミカファンギンとボリコナゾールの点眼ならびに結膜下注射とピマリシン眼軟膏,ボリコナゾールとテルビナフィンの内服で治療したが浸潤は増悪した。治療的角膜移植を2回施行したが,3か月後に浸潤は再燃し,角膜融解をきたした。結膜被覆を行い,現在光覚弁となっている。P. lilacinumによる角膜炎は日和見感染や外傷,コンタクトレンズが誘因とされている。本症例では虹彩炎の治療に用いていたステロイド点眼や不衛生な家庭環境が両眼の角膜炎発症に関係したことが示唆された。
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