綜説
高齢者の斜視
木村 亜紀子
1
1やさしい目のクリニック(兵庫県)
キーワード:
高齢者
,
斜視
,
複視
Keyword:
高齢者
,
斜視
,
複視
pp.247-252
発行日 2024年3月5日
Published Date 2024/3/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000003556
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本邦では他国と比べても高齢化が急速に進んでおり,斜視手術を受ける高齢者も増加している1)。加齢に伴う変化,すなわち調節力・融像能の低下による斜視は間欠性であったものを恒常化させる。また,動脈硬化などによる微小循環障害,脳梗塞などの脳血管障害,転倒などによる頭部外傷後の斜視なども,基礎疾患の上に加齢が加わることでリスクが増すであろう。また,比較的若い世代にみられた重症筋無力症,甲状腺眼症などの疾患の高齢発症は,本邦が長寿国ゆえの現象かもしれない。さらに,これまで明らかな原因を特定できなかった複視で発症するわずかな斜視が,加齢性斜視−sagging eye syndromeとして広く周知されるようになったことは,最近のトピックスといえるであろう。ただし,高齢者であれば“sagging eye”と安易に診断する傾向は好ましいものではなく,重症な疾患を見逃さないためにも高齢者の斜視の診断は慎重に行うべきと考える。
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