症例報告
眼科受診を契機に診断されたposterior cortical atrophyの1例
森 匠平
1
,
根岸 美紗希
1
,
日榮 良介
1
,
渡部 恵
1
,
日景 史人
1
,
大黒 浩
1
,
河田 由香
2
1札幌医科大学眼科学講座
2札幌医科大学神経内科学講座
キーワード:
posterior cortical atrophy
,
cognitive visual dysfunction
,
vision disorders
,
後部皮質萎縮症
,
視覚認知機能障害
,
視力低下
Keyword:
posterior cortical atrophy
,
cognitive visual dysfunction
,
vision disorders
,
後部皮質萎縮症
,
視覚認知機能障害
,
視力低下
pp.1439-1446
発行日 2023年12月5日
Published Date 2023/12/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000003440
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視覚認知機能障害を原因とした視力および視野障害は眼科的異常所見に乏しいため,診断に苦慮することが多く,診断のためには脳神経内科等他科との連携が必須となる。今回我々は,原因不明の視力低下で紹介され,後部皮質萎縮症(PCA)の診断となった症例を経験した。患者は55歳女性,3年前より見え方の違和感や視力低下を自覚し複数の医療機関を受診してきたが,いずれも異常所見は指摘されず,経過観察となっていた。問診では「遠くを見ようとしても近くのものが目に入る」「パソコンの文字は読めるが,手書きの文字は読めない」等の訴えがあった。初診時視力は右眼0.8(0.9×−0.25D cyl−1.00D Ax90°),左眼0.4(0.7×−0.50D cyl−1.00D Ax90°),両眼ともに前眼部から中間透光体および眼底に異常所見はみられず,蛍光眼底造影検査および網膜電図でも異常所見を認めなかったが,静的視野検査で広範な視野感度の低下,動的視野検査で中心暗点とMariotte盲点の拡大を認めた。頭部MRI検査では大脳全体に広範な萎縮を認めた。視覚認知機能障害を疑い脳神経内科に紹介したところ,脳血流SPECT検査や心理学的検査の結果から,視覚認知機能障害をきたすPCAの疑いでドネペジル塩酸塩の内服開始となった。その後,自覚的な見え方は改善がみられた。原因の不明な視覚障害において,視覚認知機能障害は鑑別疾患として考慮する必要があり,その診断には,詳細な問診と神経学的および心理学的精査が重要となると考えられた。
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