症例報告
翼状片手術後に周辺部角膜潰瘍を呈し角膜穿孔に至った1例
山脇 佳奈
1
,
加藤 久美子
1
,
平野 耕治
2
,
竹内 真希
1
,
米川 由賀
1
,
加島 悠然
1
,
近藤 峰生
1
1三重大学大学院医学系研究科臨床医学系講座眼科学
2トヨタ記念病院眼科(愛知県)
キーワード:
翼状片
,
周辺部角膜潰瘍
,
角膜移植
,
pterygium
,
peripheral ulcerative keratitis
,
corneal transplantation
Keyword:
翼状片
,
周辺部角膜潰瘍
,
角膜移植
,
pterygium
,
peripheral ulcerative keratitis
,
corneal transplantation
pp.387-392
発行日 2023年4月5日
Published Date 2023/4/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000003092
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周辺部角膜潰瘍は眼痛を主訴とし,充血を伴い円周方向および中央方向に進行する角膜潰瘍である。角膜潰瘍部に結膜上皮が侵入して瘢痕化する一方で,しばしば角膜穿孔をきたすことが知られている。我々は翼状片手術の後に角膜菲薄化を伴う結膜上皮化が進行し,角膜穿孔をきたして複数回の角膜移植術で対応した症例を経験したので報告する。
症例は62歳女性。当院初診の約3年前に近医で右眼の翼状片手術を受けた。術後1か月頃から翼状片切除部位の角膜菲薄化,血管侵入が認められ,0.1%フルオロメトロンの局所投与が開始された。角膜への偽翼状片様の組織侵入が著しくなってきたため,術後3年目に紹介により当科を受診した。当科でフルオロメトロンを一時的に中止してみたところ,眼痛とともに侵入組織の先端部分に下掘れの角膜潰瘍が出現した。特徴的な角膜所見と全身疾患の既往がないことから,特発性周辺部角膜潰瘍と診断し,0.1%ベタメタゾン点眼を開始した。角膜潰瘍は2週間で消失したが,初診から4か月目に結膜下の菲薄化した角膜が穿孔をきたし,その1年半後には角膜穿孔が広範囲となったため,層状角膜移植を施行した。角膜移植によって角膜潰瘍は寛解したが,視力が低下したため,視機能改善目的で二期的に全層角膜移植を施行した。その後はベタメタゾン点眼を継続し,角膜潰瘍の再発は認めず,矯正視力は(0.8)と良好である。
再発翼状片ないし偽翼状片の結膜上皮下において角膜菲薄化が進行する場合には,特発性周辺部角膜潰瘍が原疾患である可能性を考え,治療の強化とともに羊膜移植術,層状角膜移植など角膜穿孔に対応した外科的治療の適応も念頭に置いて準備をしておくべきである。
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