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近年の眼科イメージング機器の飛躍的な発展に伴い,脈絡膜の形態や循環動態の詳細な観察が可能になってきた。1990年代のインドシアニングリーン蛍光眼底造影(indocyanine green angiography:ICGA)導入後,黄斑疾患のなかでも特に中心性漿液性脈絡網膜症(central serous chorioretinopathy:CSC)やポリープ状脈絡膜血管症(polypoidal choroidal vasculopathy:PCV)における,脈絡膜血管透過性亢進(choroidal vascular hyperpermeability:CVH)や拡張した脈絡膜血管といった脈絡膜の異常が知られるようになった1)~4)。その後,光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)の急速な進歩,特にenhanced depth imaging OCT(EDI-OCT)の登場により脈絡膜の深部構造を捉えることができるようになった5)6)。EDI-OCTを使用した定量的研究により,CSCは正常眼と比較して厚い脈絡膜を特徴とすること7),PCV患者では典型加齢黄斑変性(age-related macular degeneration:AMD)患者と比較して厚い脈絡膜を持つ症例が多いことが報告された8)9)。このような脈絡膜肥厚,透過性亢進などの特徴は滲出性の黄斑疾患の付随所見ではなく,主たる病因と考えられ,Freundらのグループにより,「pachychoroid」という用語で表現されるようになり10),一連の共通の病態を有するより広範な疾患群はpachychoroidスペクトラム疾患群(pachychoroid spectrum diseases)と呼ばれるようになった。Pachychoroidスペクトラム疾患群は①滲出性変化を伴う疾患,②血管新生を伴う疾患,③萎縮を伴う疾患に細分類され11),代表疾患としてはpachychoroid pigment epitheliopathy(PPE)やCSC,pachychoroid neovasculopathy(PNV),PCVなどを含む(表1,図1)。Pachychoroidスペクトラム疾患群のなかでは疾患間の移行,すなわちCSCやPPEからPNVへの移行,PNVからPCVへの移行や,逆にPCVからPNVへの移行などが観察される(図2)。近年,pachychoroidはdrusenと並ぶ滲出型の新生血管黄斑症の主要な病因とされ12),pachychoroidの構造的,および機能的異常への関心の高まりとともに,治療における重要性が広く認識されている。しかしながら,pachychoroidに関して多数の報告があるなかでも明確な診断基準というのはいまだ確立されておらず,喫緊の課題となっている。
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