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肥厚性硬膜炎(hypertrophic pachymeningitis:HP)は脳脊髄硬膜が種々の原因や基礎疾患により肥厚し,頭蓋や脊椎を貫通している脳,脊髄神経を圧迫したり循環障害をもたらしたりすることで疼痛や機能障害をきたす病態である。全身疾患の部分症候であることがあるので,独立した疾患としては扱いにくい。視力・眼球運動障害により患者のQOLが著しく損われることがあり1)~3),下位脳神経障害により誤嚥性肺炎をきたすことや原疾患の増悪で死亡することもある。硬膜のみでなく,くも膜や軟膜を含んで脳脊髄の実質に炎症が及ぶこともある。本邦において全国調査が施行され4),近年は症例数を集めた報告が増加した5)~9)。従来のANCA関連血管炎(anti-neutrophil cytoplasmic antibody related vasculopathy:AAV)の典型である多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis:GPA)やその関連疾患である顕微鏡的多発血管炎(microscopic polyangiitis:MPA),好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA)に伴うもの以外に,多巣性線維硬化症(multifocal fibrosclerosis:MFS)やIgG4関連疾患(IgG4-related disease:IgG4-RD)の提唱により,全身臓器疾患に伴って生じる肥厚性硬膜炎として新たな研究の進展がみられている。原因が感染症の場合にはそれに対する診断と治療が必須であるが,免疫性ではグルココルチコイド(glucocorticoid:GC)を含む種々の免疫抑制薬が試みられるものの難治症例の存在とGC漸減中の再発など課題が多く,発症機序の解明と新しい治療法が模索されている。
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