症例報告
緑内障精査中に診断された急性後部多発性斑状色素上皮症の1例
小川 麻里奈
1
,
臼井 嘉彦
1
,
丸山 勝彦
1
,
片平 晴己
1
,
毛塚 剛司
1
,
後藤 浩
1
1東京医科大学 臨床医学系眼科学分野
キーワード:
急性後部多発性斑状色素上皮症
,
緑内障
,
視野障害
,
APMPPE
,
glaucoma
,
visual field defect
Keyword:
急性後部多発性斑状色素上皮症
,
緑内障
,
視野障害
,
APMPPE
,
glaucoma
,
visual field defect
pp.663-669
発行日 2021年7月5日
Published Date 2021/7/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000002189
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急性後部多発性斑状色素上皮症(acute posterior multifocal placoid pigment epitheliopathy:APMPPE)は,両眼の軽度の霧視や視力障害などの自覚症状とともに急性発症し,中心暗点などの視野障害を生じるが多くは自然軽快あるいはステロイドの内服により症状は改善し,視力予後は比較的良好な疾患である。一方,開放隅角緑内障の早期における視野異常は自覚症状に乏しい。今回,緑内障精査中に発見,診断されたAPMPPEの1例を経験したので報告する。
症例は45歳,男性。右眼の視野異常,霧視,頭痛を自覚し,東京医科大学病院眼科を受診した。視神経乳頭拡大がみられ,緑内障が疑われたため視野検査を計画したが,右眼の視力低下と視野障害が増悪し,翌日再診した。Humphrey静的視野では右眼に鼻側穿破を伴う弓状暗点とMariotte盲点の拡大を認めた。眼底には網膜深層部に黄白色滲出斑が散在し,フルオレセイン蛍光眼底造影では滲出斑に一致して蛍光の逆転現象がみられたため,APMPPEの診断に至った。視力低下が顕著であったためステロイドの内服による治療を開始したところ,右眼のAPMPPEによる視力および視野障害は著明に改善し,緑内障性視野障害のみ残存した。
APMPPEでは脈絡毛細血管板の閉塞ならびに網膜色素上皮の障害により暗点などの視野障害をきたすため,緑内障を併発している場合には診断に留意する必要がある。
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