特集 視神経疾患と緑内障性視神経症の鑑別
序論
石川 均
1
1北里大学医療衛生学部視覚機能療法学専攻
pp.613-613
発行日 2021年7月5日
Published Date 2021/7/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000002181
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私は研修医時代,緑内障と視神経疾患によって生じた視神経乳頭変化の違いについて先輩医師に相談したことがあった。その際,先輩医師から神経眼科の大御所である,Jonathan D. Trobe先生の論文を渡された(Arch Ophthalmol 98:1046-50, 1980)。本論文が発表された1980年当時はHumphrey視野計も,また正常眼圧緑内障の概念も確立されていない時代で,さらにMRIの臨床応用も始まったばかりの頃である。本論文は緑内障専門医,神経眼科専門医合計3名が視神経乳頭のステレオ写真から乳頭変化が緑内障によって生じたものなのか,視神経疾患によって生じたものなのかを判定する内容で,世界最高の専門医でも29眼の非緑内障性視神経萎縮中13眼(44%)を緑内障性視神経変化と判定したとあり,安心した記憶がある。しかし,この論文の最も重要なポイントは視神経疾患であれば視神経乳頭rimの色調が蒼白になる割合が94%,緑内障であればrimの部分的,全体的な萎縮が87%に確認され,一方でrimの狭小化は緑内障の47%にとどまり,鑑別には不向きであったこと,laminar dotsは両者に認められることが記載されている点である。この事実は本特集「視神経疾患と緑内障性視神経症の鑑別」のなかでも随所に述べられている。
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