Ⅴ.緑内障
2.濾過手術後の浅前房(悪性緑内障を含めて)
酒井 寛
1
1浦添さかい眼科(浦添市)
キーワード:
トラベクレクトミー
,
浅前房
,
悪性緑内障
,
毛様体脈絡膜剥離
,
毛様体ブロック
,
trabeculectomy
,
flat anterior chamber
,
malignant glaucoma
,
ciliochoroidal detachment
,
ciliary block
Keyword:
トラベクレクトミー
,
浅前房
,
悪性緑内障
,
毛様体脈絡膜剥離
,
毛様体ブロック
,
trabeculectomy
,
flat anterior chamber
,
malignant glaucoma
,
ciliochoroidal detachment
,
ciliary block
pp.1169-1176
発行日 2020年10月30日
Published Date 2020/10/30
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000001874
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濾過手術後の合併症には濾過不全による高眼圧,過剰濾過による低眼圧がある。低眼圧は長期的には低眼圧黄斑症を引き起こすことがあるが,短期的には浅前房を伴うことが多く,前房消失に至る場合がある。前房消失と漸増する高眼圧である悪性緑内障に至ることは少ないが基本的な病態は共通している。有水晶体,遠視,女性,術前浅前房,原発閉塞隅角緑内障,血管新生緑内障,緑内障手術の既往,術前高眼圧,高齢など多くの因子が濾過手術後の前房消失の術前危険因子として報告されている。術後低眼圧や炎症は前房消失と関連する。病態としては,房水が硝子体腔に灌流するが前房を形成しない房水動態異常が生じている。房水動態異常の原因は第一に前房からの過剰濾過であり,硝子体圧を大きく下回ることにより前房は浅くなる。低眼圧による毛様体脈絡膜剥離は毛様体突起の前方回旋により浅前房を悪化させる。毛様体脈絡膜剥離の危険因子としては落屑緑内障,厚い角膜も報告されている。浅前房または前房消失の治療としては安静,消炎,房水産生の抑制,粘弾性物質の前房内注入,強膜弁の再縫合,強膜開窓術,硝子体切除術などがあり経過も加味して組み合わせて選択する。濾過手術の術後合併症は高頻度であり,術後管理は創傷治癒を含めた術後合併症との闘いであるといっても過言でない。個々の症例の病態や背景は異なっており,さらに刻々と変化する。治療においては複雑に絡み合う病態を理解して対処する洞察力が求められる。
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