症例報告
増殖糖尿病網膜症と鑑別を要した梅毒性視神経網膜炎の1例
小澤 憲司
1
,
管野 宏昭
1
,
犬塚 将之
1
,
望月 清文
1
,
工藤 琢哉
2
,
山田 恵
2
,
下畑 享良
2
1岐阜大学医学部附属病院眼科
2岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野
キーワード:
梅毒
,
神経梅毒
,
増殖糖尿病網膜症
,
視神経網膜炎
,
syphilis
,
neurosyphilis
,
proliferative diabetic retinopathy
,
optic retinitis
Keyword:
梅毒
,
神経梅毒
,
増殖糖尿病網膜症
,
視神経網膜炎
,
syphilis
,
neurosyphilis
,
proliferative diabetic retinopathy
,
optic retinitis
pp.709-715
発行日 2020年7月5日
Published Date 2020/7/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000001733
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増殖糖尿病網膜症(PDR)と類似の眼底所見を呈したが,早期に診断・治療が可能であった梅毒性視神経網膜炎の1症例を報告する。
症例は38歳男性。半年前に近医において糖尿病(HbA1c 12%)と診断された。3か月前に右眼の耳側視野障害を自覚し,近医眼科を受診。右眼PDRと診断され,抗血管内皮増殖因子(VEGF)製剤硝子体内投与を目的に岐阜大学医学部附属病院紹介となった。初診時矯正視力は右1.0,左1.2。前眼部には両眼とも炎症所見はみられず,眼底では両眼の眼静脈は軽度拡張・蛇行し,右視神経乳頭上に増殖膜と新生血管を認めた。蛍光眼底造影検査では右眼視神経乳頭上からの蛍光漏出と増殖膜周囲に散在する微小血管瘤を認めた。右眼に対し抗VEGF製剤の硝子体内投与を行い新生血管の退縮傾向をみたが,左眼視神経乳頭の発赤がみられた。血液検査において梅毒RPR 3.24 R.U.,TP抗体20以上,髄液検査では細胞数増加,TP抗体20以上,TPHA 640倍と高値を認めた。神経梅毒に伴う梅毒性視神経網膜炎と診断し,脳神経内科でペニシリンG 2,400万単位/日の投与を行い,自覚症状と眼底所見の改善を得た。なおヒト免疫不全ウイルス抗体の定性検査は陰性であった。
梅毒性視神経網膜炎ではPDRと類似した眼所見を呈することがあるので,青壮年層でコントロール不良の糖尿病患者の診療では注意を要する。
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