臨床報告
増殖糖尿病網膜症治療中に両眼の網膜中心動脈閉塞症を合併した1例
久保 さえ子
1
,
厚東 隆志
1
,
加藤 悠
1
,
井上 真
1
,
平形 明人
1
,
石田 均
2
1杏林大学医学部眼科学教室
2杏林大学医学部第三内科学教室(糖尿病・内分泌・代謝内科)
キーワード:
増殖糖尿病網膜症
,
糖尿病黄斑浮腫
,
網膜中心動脈閉塞症
,
proliferative diabetic retinopathy
,
diabetic macular edema
,
central retinal artery occlusion
Keyword:
増殖糖尿病網膜症
,
糖尿病黄斑浮腫
,
網膜中心動脈閉塞症
,
proliferative diabetic retinopathy
,
diabetic macular edema
,
central retinal artery occlusion
pp.851-856
発行日 2018年8月5日
Published Date 2018/8/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000000754
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増殖糖尿病網膜症の治療中に両眼の網膜中心動脈閉塞症(CRAO)を合併した症例を経験したので報告する。症例は82歳男性,近医で糖尿病網膜症を指摘されて当科を受診した。糖尿病歴は20年,HbA1c 6.2%,食事療法のみでコントロールされていた。既往に高血圧,高脂血症があった。抗凝固薬や抗血小板薬の内服はなかった。矯正視力は右0.6,左0.6で,両眼に網膜新生血管,右眼は黄斑浮腫,左眼には軽度の硝子体出血があった。増殖糖尿病網膜症の診断のもとに両眼に汎網膜光凝固,右眼にラニビズマブの硝子体内注射を施行した。注射4週後に左眼にCRAOを発症し,視力は0.01に低下した。心臓および頸動脈エコー検査では異常がなかった。クロピドグレル(CLP)内服を開始した。その後右眼の黄斑浮腫の再燃によりラニビズマブの硝子体内注射を5回施行した。1年経過した時点で右眼にCRAOを発症し視力は0.1に低下した。CLP内服のコンプライアンスは不良であった。最終視力は右0.3,左0.03であった。糖尿病網膜症の症例には眼疾患のほかに複数の動脈硬化性素因を持っている場合も多く,治療中の全身血管疾患の合併には十分に注意する必要がある。
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