- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
加齢黄斑変性(age-related macular degeneration:AMD)は日本においても中途失明の原因疾患として非常に重要な疾患であり,その完全な治療法の確立が望まれている。日本におけるAMDの特徴として,ドルーゼンがない症例でもAMDを発症することがあり,またポリープ状脈絡膜血管症(polypoidal choroidal vasculopathy:PCV)を含めた滲出型AMDもしくはneovascular AMDが大多数を占めることが挙げられる。一方欧米では,AMDの診断には眼底にドルーゼンが存在することが不可欠と考えられることが多く,また滲出型AMDもさることながら,萎縮型AMDもしくはgeographic atrophy (GA)による失明が多く,GAの社会的損失による影響は日本以上に深刻である。過去に行われた大規模スタディにおいても,欧米系白人の割合が多いBeaver Dam Eye Study,Rotterdam Study,Blue Mountains Eye StudyでのAMD発症率と,母集団の特徴が異なるBarbados Eye Study,Baltimore Eye Studyの結果から,欧米系白人がアフリカ系アメリカ人よりAMDに罹患しやすいことは容易に解釈できる。また,National Eye Institute(NEI)の報告を見ると80歳以上では欧米系白人の失明率がアフリカ系アメリカ人のそれを超えることや,米国の州ごとの失明率を見ても欧米系白人の割合が高い北中部の州でAMDの発症率と失明率がともに高いことから,AMDによる失明や社会的損害が米国にとっていかに深刻な問題であるか想像に難くない(関連サイト1参照)。滲出型AMDに対しては血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)を標的としたいわゆる抗VEGF薬が既に眼科医薬品市場を席巻している。眼科における抗VEGF薬に限らず,生物学的製剤はその関連特許取得や開発費用に膨大な予算が必要である一方,治療効果は従来型の治療薬を凌駕する効果が期待されるため,ベンチャー企業や製薬会社としても生物学的製剤の新薬開発は一攫千金を狙うような側面があることは否めない。加えて萎縮型AMD,GAに対しては,その社会的損失の大きさにもかかわらず,いまだ有効な治療薬は何ひとつ認められておらず,医薬品開発の立場からすれば市場開拓の大きなチャンスが残っているといえる。
Copyright © 2020, KANEHARA SHUPPAN Co.LTD. All rights reserved.