網膜橋渡し研究アップデート
7.幹細胞治療
崎元 晋
1
1大阪大学大学院医学系研究科 脳神経感覚器外科学 眼科学教室
pp.59-63
発行日 2020年1月5日
Published Date 2020/1/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000001519
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アメリカ食品医薬品局(FDA)が1993年に行った細胞治療に関する定義によると,細胞治療とは「体外で加工又は改変された自己由来,同種由来又は異種由来の細胞を投与することによってヒトの疾病又は損傷を予防,処置,治療ないし緩和すること」とされている。一方再生医療に関しては,2013年に欧州科学財団が「加齢,疾病,損傷,又は先天的障害により組織・器官が失った機能を修復ないし置換することを目的に,機能的かつ生きている組織を作り出すプロセス」と定義している。一般に細胞治療というと,幹細胞等を用いた組織の再生医療と混同されがちであるが,図1のように考えると理解しやすい。細胞を用いる再生医療は,細胞・組織・器官を移植することにより,機能的再建を試みる治療であり,内在性細胞を活性化させる治療や,細胞を用いる免疫療法とは区別される。つまり細胞治療の基本的戦略としては,以下の2つが挙げられる。1)組織の置換(replacement)は,再生医療を目的とする細胞療法として最も期待される効果であり,例として造血幹細胞移植,角膜内皮移植などが挙げられる。もうひとつの重要な効果として,2)保護因子の放出や抗炎症作用(trophic effect)が挙げられる。例としては間葉系幹細胞移植による移植片対宿主病(GVHD)治療などである。
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