臨床報告
緊急ドレナージを要した前頭洞mucoceleの眼窩および頭蓋内進展の1例
坂井 淳
1
,
田上 瑞記
1
,
横田 知衣子
2
,
寺西 裕一
2
,
本田 茂
1
1大阪市立大学大学院医学研究科 視覚病態学
2大阪市立大学大学院医学研究科 耳鼻咽喉病態学
キーワード:
副鼻腔粘液嚢胞
,
頭蓋内進展
,
眼窩膿瘍
,
frontal mucocele
,
intracranial invasion
,
orbital abscess
Keyword:
副鼻腔粘液嚢胞
,
頭蓋内進展
,
眼窩膿瘍
,
frontal mucocele
,
intracranial invasion
,
orbital abscess
pp.875-878
発行日 2019年8月5日
Published Date 2019/8/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000001284
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要 約
はじめに
前頭洞粘液嚢胞(frontal mucocele)は,緊急ドレナージを要する前頭洞鼻腔嚢胞のなかでは上顎洞に次いで多く,鼻前頭洞管の閉塞が起点となり発生する。今回,前頭洞粘液嚢胞が感染を契機に膿瘍化し,眼窩および頭蓋内進展をきたした症例を報告する。
症例
37歳,男性。数日前より左眼瞼の腫脹と発赤があり,近医眼科において加療されるも改善なく,当院紹介となった。初診時の矯正視力は左0.6,左上眼瞼腫脹および強い開眼制限を認めた。触診上,3横指程度の弾性硬の腫瘤性病変を触知したため,眼窩腫瘍を疑い眼窩部CTを施行した。CTでは左前頭洞から周囲の骨破壊を伴う腫瘤性病変を認め,腫瘤により眼窩内進展をきたし,眼球偏位とともに,前頭骨は部分的に欠損し,頭蓋内進展も認めた。急速増大傾向があることから膿瘍化が疑われ,頭蓋内への穿破を危惧しドレナージ目的で眼窩膿瘍切開術を行った。術中嚢胞内から多量の排膿をみた。後日,耳鼻咽喉科で根治的な内視鏡下鼻副鼻腔手術を施行し,術後は再発なく経過している。
結論
前頭洞mucoceleはしばしば眼球突出など眼科症状を契機に発見されることがある。今回の症例のように,急速に増大する場合は感染を併発していることがあり,特に頭蓋内進展を伴う場合は加療が遅れると致命的な結果をきたす。可能な限り,膿瘍減圧のため眼窩膿瘍切開を早急に行う必要があると考える。
急速に増大する眼窩腫瘤性病変では副鼻腔嚢胞の併発感染を鑑別診断に入れる必要がある。
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