網膜橋渡し研究アップデート
3.神経保護
楠原 仙太郎
1
1神戸大学大学院医学研究科 外科系講座眼科学分野
pp.289-293
発行日 2019年3月5日
Published Date 2019/3/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000001091
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加齢黄斑変性や糖尿病網膜症に代表される網膜疾患における視力・視野障害は感覚網膜が障害されることによる網膜機能異常が原因である。血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)は強い血管新生作用と血管透過性亢進作用を有する増殖因子であり,VEGF阻害薬を用いた治療によって多くの網膜疾患患者の視機能予後が改善した。網膜機能を視細胞を含めた網膜神経細胞の機能として捉えた場合,正常な網膜機能を長期的に維持するためには,神経および神経を取り巻く周囲の細胞,すなわち,グリア細胞,血管内皮細胞,周皮細胞,のすべてが正常に機能することが重要になる。しかしながら,我々が現在治療介入可能な細胞は(抗VEGF薬による)血管内皮細胞のみであり,このことが多くの網膜疾患が難治である一因となっている。以上の理由から,網膜神経細胞機能を維持する治療(神経保護療法)の登場が長らく期待されてきた。本稿では,臨床応用が近づいている治療法を含めて網膜神経保護療法に関する最新の情報を紹介する。
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