眼科手術の適応―最新情報
5.角結膜 6)翼状片の手術適応〜どのような症例が手術の適応となるのか〜
加瀬 諭
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1北海道大学大学院医学研究科医学専攻感覚器病講座眼科学分野
キーワード:
翼状片
,
epithelial downgrowth
,
接着阻害
,
contact inhibition
Keyword:
翼状片
,
epithelial downgrowth
,
接着阻害
,
contact inhibition
pp.1153-1158
発行日 2017年9月30日
Published Date 2017/9/30
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000000156
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翼状片は眼表面に発生する増殖組織であり,病理学的には扁平上皮化生をきたした上皮細胞と,線維芽細胞,リンパ球を主体とした炎症細胞,毛細血管よりなる間質成分で構成される。これまでの病理学的研究により,翼状片の上皮細胞の増殖能は正常結膜よりも高いことが知られている1)〜3)。翼状片は増殖すると瞳孔領を遮断し,ボウマン(Bowman)膜を破壊して角膜実質混濁を形成する。根本的な薬物治療はなく,外科的な治療が行われる。翼状片の外科的治療は今日まで有茎結膜弁移植,遊離結膜弁移植,羊膜やマイトマイシンC を用いた手術,無切除Z 型切開回転術などさまざまな手法が報告されており4)〜6),その詳細については紙面の関係上,他誌に譲りたい。翼状片の外科治療の適応は,実は非常に容易ではない論題である。なぜなら,翼状片は代表的な,いわゆるありふれた眼表面疾患にもかかわらず,翼状片で失明する可能性は本邦では極めて乏しいのが現状である。失明に直結する眼科疾患であれば,眼科医から積極的に患者に治療をお勧めすることができ,手術適応も比較的明白となる。しかし翼状片の手術適応には,視力障害の改善のみならず,充血の改善といった整容的な問題も関連する。もうひとつのこの論題の困難な側面として,いまだ翼状片術後の再発をゼロにする根本的な手術法は開発されていない,という点がある。実際,本稿では一般的な初発翼状片と再発翼状片の手術適応について概説することにしており,下記のごとく翼状片の一般的な手術適応は絶対的適応と相対的適応に分類することが可能と考える。他方,上記のどの手術法を選択するべきかに関しての手術適応については割愛する。
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