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症例は85歳男性で、76歳時に解離性大動脈瘤を発症し保存的に加療された。初診2ヵ月前に左眉毛外側を打撲し、10mmの裂創を受傷し同部位の止血ができず受診した。アルギネート創傷被覆材を使用した圧迫、バイポーラでの焼灼、縫合処置でも止血が得られず、血腫を形成し徐々に増大した。アスピリン内服を中止し、血腫切除・縫縮を行ったが、術後に同部位より大量出血をきたした。赤血球濃厚液、新鮮凍結血漿を輸血し、創内へのボルヒール(フィブリノーゲン)注入を行い一時的に止血が得られた。しかし、アスピリン内服を再開したところ血腫を形成した。左眉毛外側から突出する暗紫紅色の腫瘤があり周囲に熱感を伴う発赤腫脹を認め、滲出血のような出血が続いていた。顔面以外には出血や紫斑は認めなかった。胸部単純X線で左肺野に大きく張り出した解離性大動脈瘤陰影を認めた。病理組織学的所見はHE染色ルーペ像で皮膚から突き出し筋層に至る血腫様の腫瘤と、辺縁真皮への炎症細胞浸潤を認め、辺縁真皮のHE染色強拡大像では真皮浅層~深層にかけ、好中球、リンパ球、好酸球の浸潤を認めた。所々に血管外への赤血球漏出があった。解離性大動脈瘤に起因する慢性線溶亢進型の播種性血管内凝固症候群(DIC)による血腫と診断した。ナファモスタットメシル酸塩投与を開始し、セファゾリンナトリウムを投与した。速やかに止血が得られ、治療5日目には血腫は乾燥し血痂となった。創の経過は良好であったがFDP、D-ダイマーの検査所見が乏しいため、ヘパリンナトリウム持続投与を追加した。9日目には痂皮が脱落し、2cmの潰瘍が残るのみとなり、FDP、D-ダイマー、TAT、PICの値は低下し、3週間で上皮化した。
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