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症例は30歳代男性で、2年前、発熱、蝶形紅斑、関節炎、漿膜炎、リンパ球減少を生じ、抗U1-RNP抗体・抗Sm抗体陽性で全身性エリテマトーデス(SLE)と診断され、1ヵ月前、右中指指尖部が壊疽に陥り、強い疼痛を伴い、膠原病に伴う末梢循環不全か抗リン脂質抗体症候群(APS)の血栓による手指潰瘍・壊疽が疑われた。右手手首~指尖まで明らかな冷感があり、右示指、中指末節部は暗紫色を呈し、右中指指尖部は黒色壊疽化していた。血算、生化学に異常はなく抗核抗体は2560倍、抗U1-RNP抗体、抗Sm抗体は陽性であったが抗トポイソメラーゼ抗体、抗セントロメア抗体等は陰性であった。心電図、心エコー、下肢動静脈エコーで血栓塞栓源となる所見はなく、MRI、眼底検査でも血栓血管病変は認めなかった。上肢血管造影を施行し、左右とも末梢細動脈の描出が不良であったが、特に右橈骨動脈の造影遅延、右示指、中指の指動脈途絶を認めた。下肢血管造影で下肢動脈の描出は良好であった。指尖潰瘍・壊疽の原因について、入院時は膠原病による末梢循環障害あるいはAPSによる血栓を疑ったが全身性強皮症、APSの合併症は否定的であった。長期の喫煙習慣、血管造影で右示指、中指の途絶を認めたこと、指尖潰瘍の原因となる膠原病が否定され、他の原因も指摘できなかったことから、指尖潰瘍・壊疽は手指に限局したBuerger病によるものと診断した。禁煙徹底、ベラプロストナトリウム、シロスタゾール内服、アルプロスタジル、アルガトロバン点滴投与を開始し、細菌感染併発のため抗菌薬併用・洗浄、外用処置による保存的加療で潰瘍は縮小し、上皮化した。退院後は禁煙を継続し、退院後7ヵ月、潰瘍は再燃していない。
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