特集 循環器疾患を有する患者の妊娠・出産
治す 循環動態に影響を与える産科合併症
大里 和広
1
1三重大学 大学院医学系研究科臨床医学系講座産科婦人科学
キーワード:
妊娠悪阻
,
血栓塞栓症
,
降圧剤
,
抗凝固剤
,
心内膜炎-感染性
,
脱水症
,
帝王切開術
,
低血圧
,
妊娠合併症-心臓血管系
,
妊娠高血圧症候群
,
肺塞栓症
Keyword:
Anticoagulants
,
Antihypertensive Agents
,
Cesarean Section
,
Dehydration
,
Endocarditis, Bacterial
,
Hypotension
,
Hyperemesis Gravidarum
,
Pregnancy Complications, Cardiovascular
,
Pulmonary Embolism
,
Thromboembolism
,
Hypertension, Pregnancy-Induced
pp.373-379
発行日 2017年4月9日
Published Date 2017/4/9
DOI https://doi.org/10.18885/J03097.2017201290
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妊娠すると妊婦には内分泌代謝や血液凝固能,さまざまな臓器・組織などの変化が起こる。特に心臓と循環は生理的にめざましい変化(適応)をとげる。心機能の変化は妊娠初期から明らかとなる。心拍出量は増加しそれを反映して全身の血管抵抗が減少し心拍数が増加する。血圧は妊娠初期から低下し始め,thirdtrimesterより分娩にかけて上昇する。このような生理的な変化に加え,妊婦にしか起こらない妊娠特有の合併症である「産科合併症」をきたす場合がある。産科合併症のなかでも,妊娠高血圧症などの高血圧性の疾患,分娩時の大量出血といったものが循環器系に影響を与えるものとして頻度が高く,すぐに思い浮かぶものであろう。加えて妊娠悪阻による脱水や常位胎盤早期剥離,前置胎盤からの出血なども循環器系に影響を与えると容易に考えられる。そのほか,帝王切開時の麻酔,無痛分娩などの産科麻酔や仰臥位低血圧症候群なども循環器系に影響を与えると考えられる。また切迫早産においては直接循環器系に影響を及ぼすことがないと考えられがちであるが,β刺激作用のある子宮収縮抑制薬の使用や治療のための長期臥床による血栓症のリスクも見逃してはいけない。
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