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医療裁判の現場から(第28回)帝王切開術後の患者に深部静脈血栓症の予防措置として未分画ヘパリンの投与や高次医療機関への転院措置を行うべき注意義務違反等が争われ、否定された事例
山田 隆史
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1山田隆史法律事務所
キーワード:
血栓塞栓症
,
抗凝固剤
,
帝王切開術
,
肺塞栓症
,
医療的患者移送
,
注意義務
,
医事紛争
Keyword:
Anticoagulants
,
Pulmonary Embolism
,
Cesarean Section
,
Patient Transfer
,
Thromboembolism
pp.1119-1126
発行日 2021年9月1日
Published Date 2021/9/1
DOI https://doi.org/10.34433/J00525.2021321222
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<本件のポイント>(1)第1審判決後、控訴審裁判所において第1審判決を取り消し、結論を変更したこと(2)控訴審は、帝王切開術後の褥婦に左片側性の下肢浮腫が認められた場合には、その浮腫の程度、疼痛や発赤、熱感、圧痛等のほかの症状の有無、患者の全身状態の観察等を総合して、深部静脈血栓症の発症を強く疑うべきか否かを診断するのが事件当時の一般的な産科医師の医療水準であったと判示したこと(3)控訴審は、上記の医療水準を前提に、医師が患者の下肢に浮腫を確認した各時点において患者の深部静脈血栓症の可能性を考慮に入れることができたが、浮腫の程度は軽く、下肢や全身状態等を観察した結果、ほかに深部静脈血栓症を強く疑わせる症状等はみられなかったなどとして、医師の注意義務違反を認めなかったこと
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