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はじめに
前腕骨幹部変形治癒骨折は治療困難な骨折後遺 症の1つである。橈骨・尺骨の複雑な解剖学的形状, 遠位・近位橈尺関節,さらに前腕骨間膜の機能が 組み合わさって,安定した大きな前腕回旋運動が 可能となる。橈・尺骨に微妙な変形が加わるだけ で,前腕回旋可動域(range of motion;ROM)が 制限され,食事・着脱衣・排泄・運搬・整容など のさまざまな日常生活動作に障害をきたす。単純 X線上における10°以上の角度変形で,有意な前 腕回旋制限を起こすとされるが,通常のX線像で は評価困難な回旋変形や橈骨・尺骨間の骨長差が 加わることで,10°以下の変形でも強いROM制限 を起こすことを臨床上経験する1)~ 3)。 前腕骨幹部変形治癒骨折に遠位・近位橈尺関節 脱臼を伴ったいわゆる陳旧性Galeazzi・Monteggia 骨折の治療も,臨床上しばしば問題となる病態で ある。陳旧性Monteggia骨折に対しては尺骨近位 での角状骨切りや緩徐延長矯正が試みられている が,受傷後長期経過例では脱臼整復が困難な症例 がしばしば見受けられる。このような症例では, 近位橈尺関節の形状に変化が生じ,橈骨頭の整復 が阻害されることが最近の研究から明らかになっ ている4)。また,尺骨のみならず橈骨にも変形の あるⅣ型の陳旧性Monteggia骨折に対しては,橈 骨に対しても変形矯正が必要となってくる5)。 従来,このような変形に対して単純X線像を用 いた手術計画に基づいた矯正骨切り術が行われて きたが,三次元的変形を正確に矯正することは難 しい6)。特に橈・尺骨の両骨に変形があったり, 近位橈尺関節に形状変化があったりする症例で は,従来の治療技術では対応がきわめて困難とい える。適切な術前計画に基づいた手術に行うには, 三次元的評価法・手術計画とそれを実現するため の手術支援法が必要と考えられる。 そこで筆者らは,前腕CTデータから三次元骨モ デルをコンピュータ内で構築し,三次元変形評価に 基づいた手術シミュレーションを試みてきた7)~9)。 さらに,手術支援の方法として,患者適合型変形 矯正ガイド(patient matched instrument;PMI)と カスタムメイド骨接合プレート(以下,カスタムプ レート)の開発を行ってきた10)。PMIは,変形した 骨表面に正確に嵌合してシミュレーション通りの 骨切りやスクリューホールのプレドリリングを可 能とする,いわゆる樹脂製サージカルテンプレー トで,カスタムプレートは,矯正と内固定を同時 に行うことを可能とするチタン製骨接合プレート である。いずれも患者ごとに設計・製造される。 本稿では,実用化が近い本治療技術について概説 する。
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