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はじめに
近年,インプラント性能の向上および手術技術 の進歩に伴い,インプラントを使用した手術は増 加傾向にある。しかしその一方で,日本は超高齢 社会を迎え,合併症を有する症例も増加傾向にあ り,それに伴う術後感染の増加が危惧される。手 術部位感染(surgical site infection;SSI)は,整形 外科手術において重篤な合併症の1つであり,そ の予防が非常に重要である。清潔手術野における SSIの発生率は,表層および深部SSIを合わせると 0.1 〜17.3%程度であり,創外固定のピン刺入部 感染症となると51%にも上るといわれている1)。 脊椎手術で0.6 〜11.9%程度,初回人工関節置換 術で0.2 〜2.9%程度,人工関節再置換術で0.5 〜 17.3%程度である1)。 インプラント関連SSIを予防する目的として, さまざまなインプラント表面加工の研究が報告さ れている。その代表的なものは,金属の表面にバ ンコマイシンやゲンタマイシンなどの抗菌薬を コーティングしたもの2)〜4)や,無機物である金5), 銀6)〜10),銅11),12)などをコーティングしたもので, なかでも銀コーティングは多数研究されており,ド イツでは銀コーティング腫瘍用人工関節がすでに市 販され,その良好な治療成績が示されている13),14)。 一方で,銀は骨親和性がないことやアルギリア症 などの毒性を有することなどが危惧されている13)。 実際,腫瘍用人工関節のステムの部分には銀コー ティングがされていない。昨年,日本でも銀コー ティングした人工股関節が発売されたが,その使 用成績はまだ報告されていない。今後の動向が注 目されるところである。 筆者らは,消毒薬として長年使用されてきた ヨードに着目した。ヨードは非常に広域な抗菌ス ペクトラムを有し耐性菌の出現はなく,創の消毒 やコンピュータ断層撮影(CT)の造影剤としても 使用されており,安全性が高いことが知られてい る。またヨードは甲状腺ホルモンに必要な体内必 須元素であり,理想的な物質と考え,次世代を担 う抗菌インプラントとしてヨードコーティングの 研究を行ってきた15)。本稿では,ヨードコーティ ングチタン製インプラントについて詳述する。
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