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生体吸収性スキャフォールド(BRS)は,一定期間のみステントと同様の血管支持能力を発揮し,その後生体内で吸収されるようにプログラムされた新しい冠動脈治療テクノロジーである。BRSの概念は1980年代に提唱されたが,その開発は困難を極めた。1996年にオランダ・Thoraxcenterのvan der Giessenらは5種類の生体吸収性ポリマーの生体適合性をブタ冠動脈で評価したが,炎症に伴う内膜増殖反応が著しく,ヒトの冠動脈への応用は不可能と思われた。しかし,わが国において故・玉井秀男先生(草津ハートセンター)や伊垣敬二氏(京都医療設計)らの不断の開発努力により,1990年代後半に「Igaki-Tamaiステント」がはじめてヒトの冠動脈で使用された。現在ではヨーロッパを中心にポリマー(PLA)やマグネシウム合金で構成されるBRSが臨床試験で評価されている。第一世代の薬剤溶出性polymeric scaffoldであったAbsorb BVSⓇは,2006年よりfirst-in-man試験がオランダ・Thoraxcenterを中心に行われ,その長期の安全性を証明し,その後,薬剤溶出性金属ステント(DES)との無作為化比較試験がヨーロッパ,日本,中国,アメリカで行われた。それらのメタアナリシスでは,Absorb BVSⓇはDESに対してデバイス血栓症を含めた虚血イベントが有意に増加したことが報告され,第一世代のAbsorb BVSⓇはスキャフォールドのストラットが約150μmと厚いことや拡張限界などさまざまな改善すべき課題が浮き彫りとなった。BRSは構成する素材やポリマーの配合などによって機械的特性や生体吸収過程が異なるため,現在もさまざまなものが開発されている。
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