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■はじめに
骨折の治療には,チタン,ステンレスに代表される金属製の骨接合材が広く用いられている.金属製骨接合材は,強固な固定力がある一方で,自由に成形できない,腐食,メタローシス,プレート下でのストレスシールディング,プレート抜去のために再手術を要する,抜去が困難なことがある,などの問題点がある.これらの問題点を克服するために,1990年代から生体内吸収性の骨接合材が開発されてきた.欧米では,ポリグリコール酸(polyglycolic acid:PGA),ポリ乳酸(polylactic acid:PLA),ポリ-L-乳酸(poly-L-lactide:PLLA)が用いられてきた1,2,4).しかし,乏しい固定力,力学強度の早期喪失による骨折部再転位,材料の急速分解による異物反応,X線透過性のために術中コントロールや術後の経過観察が困難,などの欠点が指摘されていた.わが国において,PLLAとハイドロキシアパタイト(hydroxyapatite:HA)微粒子の複合体が開発され,臨床使用されてきた5,6).材料の強度は向上し,強度は長期間維持されるために骨折部が再転位せず,緩徐に吸収されるために異物反応が生じにくく,HAが含まれているためにX線不透過性となり,過去に指摘されてきた吸収性骨接合材の欠点は克服された.
われわれは,2008年7月から,PLLAとHAの複合体からなるこのメッシュ状プレートを上肢骨折の治療に用いてきた7,8).メッシュの穴に合う径2.0mmのミニスクリューとメッシュプレート専用のベンダーをタキロン株式会社,ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社と共同で開発した.この手術手技の実際と本接合材の利点について報告する.
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