Japanese
English
バイオメカニクス
アンドロイドモデルを用いた成長期の骨盤形成機序解明の試み
Pelvic formation during growth:possible mechanisms using an android model
佐中 孝二
1
,
黒澤 大輔
1,2
,
村上 栄一
1,2
,
橋本 功
3
,
相澤 俊峰
3
K. Sanaka
1
,
D. Kurosawa
1,2
,
E. Murakami
1,2
,
K. Hashimoto
3
,
T. Aizawa
3
1JCHO仙台病院国際仙腸関節研究所
2JCHO仙台病院日本仙腸関節・腰痛センター
3東北大学整形外科
1International Sacroiliac Joint Research Institute, JCHO Sendai Hospital, Sendai
キーワード:
sacroiliac joint
,
acetabular dysplasia
,
pelvis
,
android model
,
bipedal walking
Keyword:
sacroiliac joint
,
acetabular dysplasia
,
pelvis
,
android model
,
bipedal walking
pp.701-707
発行日 2025年6月1日
Published Date 2025/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei76_701
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は じ め に
われわれが日常診療している仙腸関節障害例のうち,特に20~40歳代の女性で臼蓋形成不全傾向を伴い,難治化した例が散見される.兼氏らの調査でも仙腸関節障害と臼蓋形成不全の関連について,臨床およびバイオメカニクスの観点から言及されている1,2).成長過程における骨盤形成が不十分なため,仙腸関節に通常よりも大きな負荷がかかり障害をきたしている可能性がある.発育性臼蓋形成不全では遺伝子的要因に加え,成長過程での環境因子の関与が大きいと考えられるが,乳児期のおくるみや向き癖が要因になりうること以外に特異的な環境因子は明らかになっていない3).
乳児股関節脱臼の整復後,成長に伴い臼蓋が通常に形成されていくか否か,小児整形外科医が経過観察を行っている中で,約半数の症例で臼蓋形成不全が発生する4).一方で,乳児期に股関節の問題がなく,成長期に骨盤を形成する腸骨・坐骨・恥骨の軟骨が十分に二次骨化しないと,骨盤が低形成となり,臼蓋形成不全傾向となる可能性がある.この場合,有症状となった後に成人股関節外科医が対応することになる.すなわち,脱臼整復後および骨盤の二次骨化に起因する臼蓋形成不全の具体的な予防策は乏しい.
骨盤は成長軟骨板部で成長し,最終的に骨性に連結する5).骨盤形成期における力学的要因を把握することで,成長期において臼蓋形成不全を回避するための運動を提案・指導できる可能性がある.本研究では,成長軟骨板を再現した骨盤のアンドロイドモデルを用いて,成長軟骨板の形状と骨盤周囲筋による負荷の方向を検討し,骨盤の成長にかかわる因子について考察した.

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