私論
ルーチン
四宮 陸雄
1
1広島大学四肢外傷再建学講座准教授
pp.428-428
発行日 2025年5月1日
Published Date 2025/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei76_428
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2024年のMLBワールドシリーズは,大谷翔平選手と山本由伸選手が所属するドジャースが勝利したことが記憶に新しい.特に大谷選手はシーズン50本塁打,50盗塁という前人未踏の成績をおさめたうえ,指名打者としては初めてMVPにも輝いた.彼の活躍に触発され,少しでも彼のような成績を残したいと思いながら,社会人生活を模索している人は多いと感じる.無論,私もその一人である.私は野球選手ではなく,整形外科医である.私の立場に置き換えてみると,自分の手術技術で患者の機能予後を確実に改善させうることが目標とする成績である.技術とは,思考,経験,努力によって得られるコツやカンであると,故津下健哉先生から教えられた.よって,我々の世界では技術を習得することは何よりも難しい.技術を重要視するマインドは,広島大学整形外科の手外科・マイクロサージャリー班に脈々と受け継がれる津下ismであると思う.今の私に最高の技術が提供できているかと問われると,もちろん「No」である.大谷選手と違って,私のような凡人には越えられない才能の壁はある.しかし,大谷選手との決定的な違いは他にも多くあるように感じている.それが何なのか,その一つのヒントをくれたのは,意外と身近な存在であった.私の妻である.
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