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【要 旨】
目 的:高位脛骨骨切り術による下肢アライメント矯正が,変形性膝関節症(膝OA)の関節内生物学的環境を変化させるか否かを明らかにすることである.
対象および方法:内側膝OAに対して高位脛骨骨切り術を施行した31例を対象とした.高位脛骨骨切り術時,プレート抜釘時に滑膜組織,関節液を採取した.滑膜組織における遺伝子発現変化をマイクロアレイ,real timeポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて解析した.また滑膜組織は組織学的に滑膜炎スコアや,免疫蛍光染色でマクロファージ極性を評価した.関節液中のサイトカイン,ケモカインをenzyme-linked immunosorbent assay(ELISA)を用いて解析した.ヒト末梢血由来プライマリーマクロファージとヒト滑膜線維芽細胞(FLS)を軟骨片で刺激し,マクロファージ極性化のメカニズムを検討した.また,臨床成績はKnee Injury and Osteoarthritis Outcome Score(KOOS)とマクロファージ関連遺伝子発現との相関を調べた.
結 果:マイクロアレイで高位脛骨骨切り術後に低下した変動遺伝子は,炎症に関連する遺伝子やpathwayが検出された.遺伝子発現では高位脛骨骨切り術後に,炎症性サイトカイン(IL1B,IL6)の発現は低下しM2マクロファージ関連遺伝子(IL1RA,IL10,CCL18,CD206)の発現は上昇を認めた.組織学的所見では高位脛骨骨切り術後に滑膜炎スコアは減少し,M1マクロファージからM2マクロファージへの極性変化を認めた.関節液では高位脛骨骨切り術後にIL-1β濃度のみ有意に減少した.軟骨片はマクロファージのM1極性化と炎症性遺伝子および蛋白質の発現に関与していたが,FLSにおいてはIL-6蛋白発現のみ上昇した.術後KOOSはM2マクロファージ関連遺伝子(CCL18,CD206)と正の相関を認めた.
結 論:高位脛骨骨切り術による下肢アライメント矯正は,滑膜の炎症を改善し,マクロファージ極性を炎症型M1から抗炎症型M2に変化させ,膝OAにおける関節内環境の改善を示した.高位脛骨骨切り術により生物学的な膝OA病態の寛解が期待できると考えられた.
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