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特集 整形外科医療安全のすべて
Ⅰ章.総 論
4.臨床研究における患者同意のあり方
How to obtain patient consent in clinical research
黒田 知宏
1
T. Kuroda
1
1京都大学医学部附属病院医療情報企画部
1Division of Medical Information Technology and Administration Planning, Kyoto University Hospital, Kyoto
キーワード:
clinical research
,
parsonally identifiable information
,
consent
,
ethical guideline for medical and health research involving human subjects
,
act on the protection of personal information
Keyword:
clinical research
,
parsonally identifiable information
,
consent
,
ethical guideline for medical and health research involving human subjects
,
act on the protection of personal information
pp.518-521
発行日 2024年5月25日
Published Date 2024/5/25
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei75_518
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は じ め に
「学問の自由は,これを保障する」.
日本国憲法第23条1)のこの一文は,本邦の学術研究の根幹である.日本国憲法が保障する基本的人権であるからこそ「個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)[個人情報保護法]」2)を含むさまざまな法は学術研究を「適用除外」とし,その扱いを研究者コミュニティによる自主規制に委ねている.
医学研究における自主規制の基本は,ヘルシンキ宣言3)第25条でうたわれている「本人の自主的な承諾なしに研究に参加させてはならない」にほかならない.被験者と対面して同意を求めるかぎり「研究対象者への事前に十分な説明を行うとともに,自由な意志に基づく同意を得ること」(「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(倫理指針)」4)第1 ⑤)はむずかしいことではない.問題になるのは,一人ひとりに直接対面して同意がとれない「後ろ向き研究」の場合である.したがって,倫理指針は紙幅の多くをこの場合の記述に割いている.本来生命科学・医学研究全般にかかわる倫理的配慮をまとめた文書であった倫理指針が,個人情報保護法の改正に従って修正されていく中で,いつの間にかデータの取り扱いに関する記述ばかりが目立つ文書へと変化してきているとの批判もあるが,そうならざるをえない事情もあるわけだ.
本稿でも後ろ向き研究の場合を中心に,臨床研究における同意のあり方を整理する.
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